どんより落ち込んだとき、何気なく背筋を伸ばしたり、歩き方を変えたりすると、ちょっとだけ気分がマシになる経験はありませんか?
「身体の姿勢・動き」と「感情やエネルギー感」には密接なつながりがあることが、研究でもわかってきています。
ここでは、複数の論文のポイントをまとめて、どのような動きがどう気持ちに影響するのかをご紹介します。
姿勢を変えると元気になる?
まず紹介するのは、大学生を対象にした実験から得られた結果です。
その実験では、前かがみでうつむく姿勢と、スキップのように体を大きく弾ませる動きを比較して、「エネルギーが湧くかどうか」を本人たちに評価してもらいました。大胆な動きをしたときは「気分が上向く」、前かがみの姿勢を取り続けると「なんだかどんよりする」という声が多かったのです。
この現象は、生理的な要因(心拍や呼吸)だけでなく、脳が「体の動きや姿勢」から受け取るシグナルの影響が大きいと考えられています。
体を元気そうに動かせば、脳が「今は活発なモード」と解釈しやすくなるのではないか、とも考えられています。
AI解析でも「上に跳ねる動き」はポジティブ
最近はAIが動画やセンサーのデータから、人の動きと感情の関係を学習する研究も盛んです。
肩・ひじ・ひざなどの位置をカメラで捉え、どの方向にどれくらいの速さで動いているかを数値化していくと、「上方向にジャンプする動き」は、かなり高い確率でポジティブな感情に結びつけられることがわかっています。人間が直感的に「跳ねる動き=ウキウキ」に感じるのは、データでも裏付けられるわけですね。
逆に、身体が縮こまって下向きに動いていると、「落ち込んでいる可能性が高い」と判定されるケースが増えます。
こうしたAIの視点から見ても、気分と姿勢・動きの間にあるリンクはかなり明確です。
ダンス理論で見る「身体と感情」
ダンスや演劇に使われるLaban Movement Analysis(LMA)という手法をAIに応用した研究もあります。LMAは、人の動きを「上へ伸びる」「下へ沈む」「体を広げる」「体を縮める」など、独特の分類で捉えていくのが特徴。
これをディープラーニングなどの技術と組み合わせると、どんな種類の動きがどんな感情と近いかを、より高精度に分析できるようになるそうです。
「上に伸びたり跳ねたりする動き」は幸福感や活力に対応、「肩を丸めて下に沈む動き」は不安・悲しみとの相関が見られるなど、ダンスの世界で言われていた直感的な感覚が科学的に裏づけられつつあります。
日常で活かすなら、こんな工夫も

こうした研究の知見を踏まえると、「少し落ち込んでいるとき」に簡単に試せる工夫がいくつか考えられます。
• スキップや軽いジャンプ
人目が気になる人は、室内でその場ジャンプや大きな足踏みでもOK。ほんの数秒でも、「あれ、なんかスッキリ?」と感じることがあります。
• 腕を高く上げるストレッチ
デスクワークで背中が丸まりがちな人にぴったり。両腕をぐーっと上に伸ばしてみると、気分も少し上向きになるかもしれません。
• 下を向きっぱなしを避ける
スマホを見続けて自然とうつむいていたら、ときどき視線を遠くに向けて首や肩を伸ばす。小さな姿勢の変化でもリフレッシュできます。
もちろん、これだけで憂うつな気分が根本的に解決するわけではありません。しかし「身体の動き→脳のフィードバック→感情の変化」という仕組みは、きちんとデータに裏づけがあり、ちょっとした姿勢チェンジが心の回復に効く可能性は高いのです。
おわりに
「背筋を伸ばすと気分が上がるなんて気のせいでしょ?」と思っている人もいるかもしれません。しかし、複数の研究が示すところでは、どうやらそれは単なる気のせいではなく、科学的にも無視できない効果があるようです。
上へ跳ねる動きなどの開放的なジェスチャーがポジティブな感情を呼び起こし、逆に体を縮めて下を向くと落ち込み感が増幅しやすい。
これを知っておくだけで、ちょっとしたメンタルの浮き沈みに対処しやすくなるかもしれません。
「最近、なんだか元気が出ないな」と感じる日が続くようなら、騙されたと思ってスキップやゆるいジャンプを試してみてください。思いのほか気持ちが軽くなる瞬間を味わえるかもしれませんよ。
さあ、皆さんもレッツ変な動き。
参考文献
Bodily expressed emotion understanding through integrating Laban movement analysis
https://doi.org/10.1016/j.patter.2023.100816
Increase or Decrease Depression: How Body Postures Influence Your Energy Level
http://dx.doi.org/10.5298/1081-5937-40.3.01
Survey on Emotional Body Gesture Recognition
https://doi.org/10.1109/TAFFC.2018.2874986