アホロートルの透明な皮膚が明かす、真皮コラーゲン形成の新常識

論文レビュー

アホロートル(Ambystoma mexicanumは、幼形成熟や強い再生能力をもつ両生類として知られ、近年の研究では真皮コラーゲン形成の新たな局面を明らかにするモデル生物として注目を集めています。従来、皮膚の真皮に存在するI型コラーゲンは主に線維芽細胞が産生すると考えられてきました。しかし、アホロートルの透明な皮膚を蛍光プローブで可視化した結果、ケラチノサイト(表皮細胞)も真皮コラーゲンを大量に合成し、線維芽細胞が侵入する前から真皮形成を主導していることが示されました。

まず、小型のアホロートル個体では真皮が単層の薄いコラーゲン層として始まり、それをケラチノサイトが継続的に分泌するコラーゲンによって徐々に厚みを増していきます。続いて線維芽細胞が侵入すると、既存のコラーゲン繊維を太く再構築し、最終的にはStratum baladachinum (SB) という新たな層も含めた三層構造へと変化することが観察されました。電子顕微鏡レベルの観察によると、線維芽細胞の突起がコラーゲン線維の間を縫うように入り込み、そこに新たなコラーゲンを付加して全体を補強していく過程が確認されています。

さらに同研究では、ゼブラフィッシュや鳥類、マウス胚でも、表皮細胞由来のI型コラーゲン産生が検出されました。これは「ケラチノサイトのコラーゲン産生能」が脊椎動物に普遍的に存在する可能性を示唆し、皮膚生物学の常識を覆す大きな発見となっています。これまで表皮はバリア機能”担うと考えられてきましたが、皮膚の構造基盤づくりにも重要な役割を果たすという視点が加わったのです。

本研究の意義は大きく、傷跡の少ない再生医療やアンチエイジング技術への応用が期待されます。加齢やダメージによってコラーゲン組成が変化するメカニズムを、より包括的に理解できる可能性が開けるからです。アホロートル特有の透明皮膚を活用したライブイメージングやパルスチェイス実験は、今後も真皮形成や線維再構築の謎を解き明かす強力なツールとなるでしょう。

参考文献
Keratinocyte-driven dermal collagen formation in the axolotl skin
https://doi.org/10.1038/s41467-025-57055-7
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