お米の買い占めが増える今こそ知りたい!おいしいお米の科学

サイエンスコラム
炊きたてごはんの香り広がる——美味しさを保つための正しい保存方法とは?

ここ最近、お米の買い占めが注目を集めています。

ところが、米は長期保存が当たり前というイメージとは裏腹に、科学的にも生鮮食品に近いほど劣化しやすい性質を持っているのをご存じでしょうか。

お米は呼吸による熱や酸素の消費、酵素反応、虫やカビの増殖といった要因で、温度と湿度が高いほどあっという間に品質が落ちてしまいます。

本記事では、お米がなぜまずくなるのか、その科学的メカニズムと正しい保存法について解説します。

買い占められたお米を買う前に、お米の科学をぜひ押さえておきましょう。


お米はどうまずくなる?知っておきたい劣化のメカニズム

お米は籾(もみ)の状態や玄米であれば生きた種子です。

呼吸を続けるため、米粒内部では酵素が働き、温度や湿度の影響を強く受けて品質が変化します。

高温多湿で放置すると、お米は短期間で脂質の酸化やデンプンの分解が進み、古米臭が発生し、炊飯時の粘り・旨みが大きく損なわれてしまいます。

まず、お米の劣化の大きな要因となるのが脂質の分解と酸化です。

お米には少量ながら脂質が含まれ、リパーゼという酵素がこれを分解すると遊離脂肪酸が増加し、さらに酸化が進むとペンタナールなどの成分が生成されて独特の古米臭を放ちます。

温度が高いほど酸化速度は上がり、湿度が高いほど微生物の活動や虫の発生リスクも高まるため、過酷な環境に長く置くほど味や香りが著しく低下していくのです。

お米の主成分であるデンプンとたんぱく質も、酵素作用や高温による構造変化でおいしさを損ないます。

デンプンは粘り・甘みに深く関わりますが、加水分解が進むと炊き上がりがパサつき、香りも弱まりがち。

たんぱく質が変性すると、硬く粘りの少ない食感になり、炊飯後のごはんが古米特有の硬さを帯びてしまう原因になります。

虫の問題やカビの発生も見逃せません。

気温が20℃を超えると害虫の活動が活発化し、袋の隙間から入りこむと繁殖し、衛生面のみならず風味にも悪影響を及ぼします。

玄米と白米の違いについても押さえておきましょう。

玄米は胚芽やぬか層が残り、ビタミンやミネラルが豊富ですが、脂質も多く酵素の活性も高いため、高温多湿に弱い性質があります。

一方の白米は、脂質が削られた分だけ酸化リスクはやや低いとされますが、表面に残った微量の脂質はやはり熱と湿気で分解されやすい点に変わりありません。

いずれも保存温度と湿度が高いほど急速に劣化することを理解しておく必要があります。


正しく保存して美味しさをキープ!科学的におすすめのポイント

冷蔵庫での保存がポイント!お米の鮮度を守る正しい保存法

お米を買い占めるのなら、保存環境を整えることが大前提です。

科学的に推奨されているおもな方法を挙げると、以下のようになります。

まず、温度を下げることが最重要です。

理想は15℃以下であり、可能なら5~10℃程度に保てると劣化はかなり抑えられます。

家庭では冷蔵庫の野菜室を利用し、袋のままではなくチャック付き袋や逆止弁付き保存袋、密閉容器などへ移し替えておけば、空気や湿気の入り込みを大幅に抑えることが可能です。

市販袋には小さな穴が開いている場合が多く、そこから空気だけでなく虫や臭いも入りこむため、大量に買った米を紙袋やビニール袋のまま放置するのは避けましょう。

次に、小分け保存を心がけると、劣化を抑えるうえでたいへん有効です。

一度開封した大容量袋を使い続けると、その都度空気に触れ酸化や水分変動が起こり、味が落ちてしまいます。

10kgのお米を1~2kgずつ小分けしておけば、一度に開封する量を最小限にでき、残りは密閉状態を保てるため、品質をより良好に維持しやすくなります。

虫やカビの点検もしやすく、袋ごとのローテーション管理もできます。

さらに、お米は家庭保存では1ヶ月程度で消費できる量を買うのが理想的です。

低温保存といえども、数か月以上放置すると少しずつデンプンや脂質の劣化が進むからです。

虫や異臭がする前に、炊飯時の粘りや香りが微妙に落ちてくるなどの兆候が見られたら、保存環境を見直すサインになります。

もし炊いたときに硬さやパサつき、独特のにおいが気になるようになったら、再度保存温度や湿度に注意しましょう。

こうした対策はすでに米の産地や研究機関でも推奨されており、各地で雪室や氷温を利用した低温高湿の貯蔵技術が開発されています。

雪室貯蔵では、自然の雪を使って安定した冷涼環境を作り、酵素による劣化や害虫の発生を抑えて新米に近い味わいを維持できると報告されています。

これらはすべて、「低温で保存すれば米の劣化は抑えられる」という科学的根拠に基づく試みだといえるでしょう。


まとめ

お米の買い占めが増えている今だからこそ、ぜひ「お米は生鮮食品に近い」という事実に目を向けてください。

高温多湿な環境で大量の米を放置すれば、脂質の酸化やデンプンの分解に拍車がかかり、古米臭やパサつきなどの明らかな劣化症状が起こりやすくなります。

科学的根拠に基づいた保存環境の整備こそが、大量買いした米を無駄にしないための最大のポイントといえるでしょう。

ぜひ、正しい保存方法を取り入れて、おいしいお米を長く味わってください。

参考文献

米の貯蔵中の変化、低温貯蔵効果
https://www.okome-summary.jp/02/characteristic02.html
お米の保存方法 ~ 最適な保存方法 ~
https://www.gohansaisai.com/fun/entry/detail.html?i=672
白米貯蔵と玄米貯蔵の条件の違いが米の品質に及ぼす影響
https://doi.org/10.2740/jisdh.28.4_289
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